インタビュアーコラム

バレエダンサーは身体で会話するのだ

インタビュアーコラム
バレエダンサーは身体で会話するのだ
創作33 「囚われの国のアリス」リハーサル風景

生まれて初めてバレエ公演を観て、驚いた。
「踊り」だからダンサーが喋らないことは予想していたが、実際に舞台を観てみたら、ダンサーたちが本当にまったく喋らないので、改めて驚いたのだ。
ダンスによって饒舌な表現が紡がれ、会話以上のコミュニケーションが物語とドラマを進めていた。
そしてフルオーケストラが、その物語をハーモニーとリズムと旋律の振動で感動的に仕上げていくのであった。
夢と愛とロマンに溢れた舞台をダンスという身体表現で披露するバレリーナ、上山榛名さんに聞いてみた。

バレエ「海賊」公演では手話とバレエ表現の説明があり、双方に似たような表現が多いことを知った。
落語という芸は、座布団の上から一歩も動かずに、時間や空間を超えてどこにでも話をもっていけるが、バレエは、話さないことによって言葉や国境の壁を越え、より多層な人にその表現を伝えることができる。
美しいもの、情愛の模様、そして人間の業をダンスと音楽によって表現する総合芸術で、壮大なミュージカルだった。

現代は、お金と電気がないと楽しく時間が過ごせない人が多い時代だが、踊りには本来的にそのようなものは不要だ。言葉を使わずに想いや愛情を表現し、ドラマを生み出すバレエこそ、今私たちが観るべきものではないだろうか。

バレエとは伝える、楽しむ、そして生きることの原初の形であることを、榛名さんのお話に見出すことができた。

インタビュアー=吉川公二

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