本場フランスのシェフと共同開発!洋菓子の魅力を底上げする函づくり

【平和商事株式会社
代表取締役 竹前友勝氏インタビュー】

普段なにげなく使わせてもらっている紙の函(“箱”ではなく“函”です)。
そこには、私たちが気づいていない、様々な工夫が施されていました。平和商事株式会社の竹前さんの話を聞いたら、きっと函の世界に魅せられること間違いなしです!

フランス修行帰りのシェフと一緒に作り上げた函をベースに

平和商事株式会社 代表取締役 竹前友勝氏インタビュー御社はどのような製品を作っていますか?何かこだわりや特徴があれば教えてください。

「弊社では、主に和洋菓子の函を作っております。82年前、祖父の代から、フランス帰りの洋菓子シェフの方たちと一緒に、当時のフランスで使われていた函を再現しようと作り始めたのが最初でした。今は、お客様のオーダーに応じて、様々な形や大きさの函を作っています。」

すごいですね。82年前というと、昭和初期。まだ海外で修行する人も少ない時代ですよね。
オーダーで作るところに特徴があるということでしょうか?

「そうですね。今はオーダーとは別に既製品としても販売しています。お菓子の函というのは、形状が一度決まったら、長く使われ続けるものなので、新しく変えようというお客様が少ないのが現状ですが。」

どういったお客様が多いですか?

「洋菓子の個人店様のお客さんがだいたい90%ですね。クリスマスシーズンの12月の上旬から中旬にかけての時期が一番多いです。」

クリスマスシーズンだと、どんなオーダーが入りますか?

「一番多いのが、クリスマスケーキのデコレーションケーキの函ですね。」

クリスマスシーズンは、今までとは違う特注の函だったりするのですか?

「町場のケーキ屋さんは中身勝負の傾向にあるので、特別ゴテゴテしたものではなくて、お店のロゴを入れるなど、シンプルな形で使われるお客様が多いですね。」

シンプルイズベスト。洋菓子以外の函も作られているとのことですが、どういったものがありますか?

「たとえば金属の部品を入れる函や、化粧品、鉛筆、蕎麦など、多種多様です。函というのは、特殊な形状があるわけじゃないので、洋菓子以外の業界でも作れるのですよ。」

いろんな業界から需要があるのですね。

少量からOK。個人店に喜ばれる受注体制

お客様からの反応や感想はどうですか?

「洋菓子の個人店向けの商売をしていると、ロット(発注単位)が小さくても作れるという点に喜ばれることが多いですね。他の会社では300~400函単位が最小ロットになるところを、弊社では50函ぐらいから受注できます。」

個人店としては、少量ずつ買えるのはありがたいですよね。置き場所の問題もありますし。ちなみに1函からでもできるのですか?

「作ろうと思えば、1函からでもできます。」

一般の個人の方がお願いすることも可能なのですか?

「今は法人のみの取引ですけれど、今後は、個人向けにも作っていけたらいいなという考えはあります。」

これまでに変わった注文やびっくりした注文はありましたか?

「変わった注文というのはないですね。もちろん作ろうと思えば、マトリョーシカのように次から次へと函が出てくるような凝った函も作れますよ。でも、普通は、函自体で何か特別なことをしようということはありません。弊社は函を作るところで、主役はあくまでもお客様ですから、商品が映えるように、高級に見せるなどの工夫に力を入れています。」

なるほど。要望がないだけで、そういう技術力はしっかり持っていらっしゃるのですね。今でこそ機械が発達して、凝った函でも正確に作れるようになったものの、昔は、型を複数作ると微妙に違いが出てしまうなどの苦労があったそう。

パッケージの良し悪しが売り上げに直結する時代

平和商事株式会社 代表取締役 竹前友勝氏インタビュー創業されてからの歴史や、現在の事業ステージ、苦労した点について教えて下さい。

「僕、会社に入って9年目なのですよ。父の代から受け継ぐにあたって、自分よりベテランの社員の方が何人かいたのですが、その人たちしか知らないノウハウがけっこうあったので、それをマニュアル化するのに苦労しましたね。」

自分では熟知していることでも、それを知らない相手に伝えるとなると、難しいものがありますものね。ちなみに営業をしてお客様を開拓することもあるのでしょうか?

「洋菓子の業界は横のつながりがすごく強いので、知り合いのシェフからの紹介といったようなことが多いですね。飛び込み営業はほとんどないです。ベテランの方のお店に飛び込んでも、『今さら変えるか』と門前払いされてしまいます。」

たしかに、洋菓子のサイズの関係もありますし、長年使い続けていた函を変えたほうがいいと急に言われても、なかなか難しそうですよね。他に苦労した点はありますか?

「お客様の洋菓子店の売り上げが落ちると函の需要が減るので、弊社も同じように売り上げが落ちることですね。クリスマスシーズンは忙しいのですが、夏場は暇になるので、仕事も取りにくくなります。違う業界を開拓することも考えています。」

今後の目標やステージといったものはあるのでしょうか?

「これからも函を作り続けていくということは変わりませんが、洋菓子屋さんにコンサルティングができればなと思っています。もちろんケーキそのものを追求されることも大事ですが、贈答用となると、函や包装のクオリティも重要になってきます。そこも含めて、洋菓子を贈る方、贈られる方の両方に喜んでいただけるような提案をしていきたいですね。」

たしかに。函って結構見ちゃいますものね。「あ、これはちゃんと包装まで考えてくれている」とか、「これは適当な包装だな」とか。

「極端な例で言えば、函やリボンに力を入れて、1粒500円くらいで売っているチョコレートだと、紙袋も含めて、包装資材に300~500円くらいかけているものもあります。」

パッケージのほうが高くついているのですね(笑)。でも、それだけ贈答用は外見が大事ということですよね。

「そうですね。中身がおいしいのはもはや当たり前で、様々なものを何でも選べる時代に、これが欲しいと思ってもらえるきっかけを作ってあげないと、敗北してしまいます。贈答用にしておくことは戦略として重要だと考えています。」

函屋の未来を守り、函の価値を伝える活動をしていきたい

平和商事株式会社 代表取締役 竹前友勝氏インタビューこのお仕事をされて9年目とのことですが、何かきっかけがあったのでしょうか?

「僕はもともと某ゲーム会社にいまして、ゲームセンター向けの営業をやっていたのですが、父が60歳になる手前に跡を継がないかという話が出たのがきっかけですね。」

なるほど。後を継ぐ形で始めたのですね。ちなみにお子さんはいらっしゃるのでしょうか?

「6歳と3歳の息子がいます。」

子どもに跡を継いでほしいという気持ちは?

「僕としては会社を続けたいという思いがありますが、自分の子どもには好きな道を選んでほしいので、従業員さんに続けてもらう選択肢も取れるようにしていきたいです。函屋さんの業界はなかなか厳しくて、ここ10年で4分の1くらいはつぶれているのですよ。」

お子さん思いの素敵なお父さん。それにしても本当に厳しい業界なのですね。

「対策としては、今年から紙器工業組合の荒川区の理事に任命されたのですが、つぶれていく会社が多い中で、生き残るために、函屋さん同士で横のつながりを持たせる活動をしていきたいと考えています。」

業界全体のことまで考えていらっしゃる!今後AIが発達して職人さんも減っていく可能性があると思いますが、そうなった場合、御社はどうしていこうと考えていますか?

「ベテランの人にしかできない仕事も、もちろん一部にはあると思うのですが、最終的には誰がやってもできるという話にはなると思います。将来的に生き残るのは、機械では真似できない専門性を持った人たちになるのではないでしょうか。」

私としても、包装や函というのは、手仕事ならではの良さがあると思うので、できるだけ残ってほしいなと思います。これから御社のことをこういう人に知ってほしいというのはありますか?

「函が持つ価値や意味に気が付いていない人は、まだたくさんいると思うのですよ。備品を入れる函にしても、ほんの少しアドバイスするだけで組み立てやすい形状に改善できることもあるので、そういう困りごとを抱えている人たちに会って、相談に乗ってあげたいですね。」

組み立てやすい函というのは具体的にどんなものなのでしょうか?

平和商事株式会社 代表取締役 竹前友勝氏インタビュー「現場で使う人が分かりやすいように工夫された函ということです。荒川区では、敬老の日に、障害者の方が作ったクッキーをおじいちゃんおばあちゃんに渡すイベントがあるのですが、障害者の方がその函を組み立てる際に、シールを貼る位置のマークが分かりにくいという問題がありました。それをひと目見て分かるように改善したところ、一気に組み立てやすくなって作業効率が上がり、ロスが少なくなりました。」

なるほど。貼る位置がずれると心配になってしまう人もいますものね。効率が良くなれば、ストレスも減りますよね。

「そういうことは、なかなか気がつかない部分だと思います。やたらロスが多いとか、組み立てづらいと思うようなことがあれば、弊社で改善策を提案できます。現場の人たちにとっても、作業が速くなる、間違いが起こりにくくなることにつながります。」

気になったことがあれば一緒に相談に乗りますよ、ということですよね。

「自分たちが作っているものは、すごく良いものなのに、なぜか売れないという場合は、函や紙袋、販促ツールなどを改善すると、良い結果に結びつくことがあります。そういうところで困っている人が、ぜひ気軽に声をかけてくれたらと思いますね。」

本当にそうですね。この記事も、函のことで困っている人たちの目に止まると良いなと思います。

他業種からアドバイスをもらうことで視野を広げることができる

もし人材を募集する場合は、どういう方が御社にマッチすると思いますか?

「今は募集をかけていないのですが、数年後には募集する機会があるかもしれません。マッチする人材で言ったら、自分で考えて行動する人。言われたことをこなすのではなく、こなしつつも工夫を入れることができる、もっとこうしたほうが良いという自分の考えを出せるという人が望ましいですね。」

ちゃんと自分の考えや意見を言えることが大事なのですね。

「もちろん、意見というのは勉強して経験がないと、なかなか言えない部分なので、やみくもに現状を否定する人も困っちゃいますけど、言われたことをこなすのが100点とは考えないでほしいなと思います。」

では、最後に読者の方にメッセージをお願いします。

「僕は今36歳なので、経営者の方から見るとまだまだ若輩者で偉そうなことを言えませんが、荒川区の若手経営者の会に参加していますので、周りの人からのアドバイスをもらって自分の中で咀嚼し、使えるものは使うというスタンスでやっています。困ったことがあったとき、他業種からヒントが得られることもあり、自分の肥やしにもなるので、経営者同士の交流会みたいなものがあれば、ぜひ参加されることをおすすめします。」

82年前のお祖父様の代から始まった函作り。奇をてらったことはせず、ただただ、函を受け取る人、組み立てる人に喜ばれる工夫を追求し、横のつながりを大切にしてきた竹前さん。
話を聞いているうちに、自社の利益だけでなく、業界全体の未来を守りたいという思いが伝わってきました。
インタビューをした日から、ケーキを買うときに、函の作りにも注目して選んでしまうようになった榎並でした。

インタビュアー 榎並千陽

平和商事株式会社 代表取締役 竹前友勝氏インタビュー