ハワイに行ったことがなくてもハワイアンジュエリーを愛したくなるお話

【株式会社ジェイボックス
代表取締役 松尾琢磨氏インタビュー】

どんな産業、カテゴリーにも、本物を貫いてがんばっている企業が存在するもの。JR恵比寿駅のすぐ近くで、ハワイアンジュエリーの工房や、専門職人を育てるジュエリースクール「ラヴァーグ」を運営する、日本最大級のハワイアンジュエリー専門ショップ、プアアリ(PUA ALLY)

プアアリを運営する株式会社ジェイボックスの代表、松尾琢磨さんに、ハワイアンジュエリーの奥深さ、業界の課題などについて、お話を伺いました。

ハワイアンジュエリーが人生のもたらすもの

あえて、ちょっと堅苦しい質問から。そもそも、ハワイアンジュエリーは、人々の人生に何をもたらしてくれるのでしょうか。

「まず、ハワイアンジュエリーは個性的なジュエリーです。デザインも独特で、好きな人はずっと好きなので、流行り廃りにあまり振り回されずに、安定した人気があります」

なるほど。たしかにそこまでメジャーな印象はないですね。

では、どんな人がハワイアンジュエリーを買っているのでしょう。

プアアリを運営する株式会社ジェイボックスの代表、松尾琢磨さん「ハワイにいい思い出がある、人生で何度かハワイを訪れているような人や、ハワイアンジュエリーがもつ意味が好きな人などがファンになってくれています」「ハワイに関係する仕事をされている人たちも多いんです。海や波乗りが好きだったり、フラダンスをやっていたり、ハワイアンショップやハワイアンフードのお店で働いていたり。そういう方たちが、ハワイを愛してることを周りの人に伝えるためにジュエリーを身につけていらっしゃいます」

自分が好きなものに関係するものや、良い思い出や気持ちが込められたものをいつも身につけるのは、いいものですね。特にジュエリーは、人に気持ちを贈ったり、贈られたり、気持ちを大切にするために自分用に買ったりするものです。

「そういう意味で、ハワイアンジュエリーは、それを買う人の人生を豊かにしていると思います」

ところで、ハワイアンジュエリーって、独特の模様をしています。

「ハワイアンジュエリーの模様は、もともとポリネシアに点在している入れ墨の文化から発生しています。家族や部族、仲間をしっかり守っていくというメッセージを発信するような機能が、入れ墨にはあるんです。この入れ墨の文化の源流には、自然に対する畏怖や感謝の意味があります。人間は海や雨といった自然の神様のおかけで、タロイモなどの食材を採る事ができたり、魚を捕らえる事が出来るので、生きていく事が出来る。という考えがあるからです」

へえ~、そういう、機能的な側面もあるのですね。入れ墨というと抵抗がありますが、ハワイアンジュエリーなら、オシャレで、美しい印象ですよね。

「日本でも、各地のお祭りは、豊作や大漁など自然の神様に対して感謝する気持ちを忘れないためのものですよね。ハワイアンジュエリーを着けている人の多くは、そういった自然を敬うことの意味を理解して着けています。仕事が忙しかったり、子供が言うことを聞かなかったりすると、そういった大切なことをつい忘れがちになってしまいますが、自然の大切さ、そして家族や仲間の大切さを思い出させてくれるものでありたいと思って、ハワイアンジュエリーを作っています」

こんなお話を聞くと、改めて、ハワイアンジュエリーの独特な模様の意味についても興味が湧いてきます。それでも、ハワイアンジュエリーの魅力を知る前のほとんどの人にとっては、少しハードルが高い気がします。

初めてハワイアンジュエリーを買う人へのアドバイス

初めてハワイアンジュエリーを買う人へのアドバイスはありますか。

プアアリを運営する株式会社ジェイボックスの代表、松尾琢磨さん「ハワイアンジュエリーに限りませんが、それを贈りたいと思った理由を贈る相手に語れるものを選ぶといいでしょう。たとえば、こういう女性でいてもらいたいという思いをこめて、このジュエリーを贈ります、というようなメッセージの意味が相手に理解されたら、きっといつまでも大切にしてもらえるでしょう」「その瞬間に、そのジュエリーは、単なる物ではなくなりますね」

おお、すてきな言葉ですね。ハワイアンジュエリーを買うお客様は、具体的に、どんな疑問や不安をもっていらっしゃるのでしょう。

「まずは、そのファッション性だけで選ぶような、言ってみればライトなお客様。ネットで調べて、その模様の意味を知って気に入ったデザインのものを直感だけで選ばれたりします。もちろん、そういう楽しみ方のあります。そういう人は、不安は少ないようです」
「結婚指輪など、人生の節目などに、もう少し慎重になってハワイアンジュエリーを選ばれるお客様は、確かに、それが本当にいいものか、このお店や販売担当の人は信用できるのか、メンテナンスはちゃんとしているのか、といった疑問や不安を持たれると思います。そういう意味で、いろいろなお店で見比べているような方が、プアアリを選んでくださっています」

数千円で買えるような安いハワイアンジュエリーというのは、本格的なものとは、どこが違うのですか?

「安い物は、マスターピースの型から複製して、磨いて仕上げています」

やはり、安いのには理由があるんですね。でも、松尾さんは、その安い物を否定しません。

「安い物からでも、入門的にハワイアンジュエリーに親しんでいただければと思います」
「それに対し、伝統的なハワイアンジュエリーというのは、基本的には、一本一本、手彫りで仕上げていきます」
「もう少し詳しく説明すると、複製で作られるハワイアンジュエリーは、鋳造(ちゅうぞう)品といって、溶けた金属を型に流し込んで作られます。一方、伝統的な手彫りのハワイアンジュエリーは、鍛造(たんぞう)品といって、金属の棒を叩いて曲げて指輪などになるわけです」

鋳造と鍛造には違いがあるのですか?

鍛造したハワイアンジュエリーは硬さが違う「鋳造と鍛造では、金属の硬さが違います。鋳造は、刀の例でいえば、刀のかたちをした型に、金属を流し込んでいくようなイメージです。鍛造は、日本刀のように、金属をカンカンカンカン叩いて作っていきます」
「できあがったものの見た目は同じですが、鍛造で作られた日本刀はスパーンと切れますが、鋳造の刀はヘニャッと曲がってしまいます。また、鋳造品は金属が柔らかいので、模様が消えやすいという特徴があります。日常生活の中で、気がつかないうちにぶつけてしまうことがありますよね。特にシルバーは柔らかく、1〜2年経つと、模様がほとんど消えてしまうことがあります。鍛造で作ったものは、硬い金属にしっかりと彫ってありますから、5年経っても10年経ってもちゃんと模様が残っています。保ちが全然違うんです。見た目では区別しにくくても、長く使ってみて初めて違いがわかります」
「常に身に着けるようなジュエリーは、すぐ変形してしまい、直さなければならないものより、保ちのいいものを持っていたいと思う人が多いのではないでしょうか」

なるほど、わかりやすいです。長期的に見たときに、品質の違いがはっきりするのですね。

でも、それについて問題もあるようですね。

「学生さんでも買いやすい低価格で、ハワイアンジュエリーを楽めるのは良いことですが、鋳造品なのに鍛造品と同じ値段で売っているようなブランドもあるので、問題だと思っています。大量に複製するために、コストを下げる方法として鋳造という技術が生まれたのに、その技術を利益を上げるために使っているメーカーもあるんです」

このときだけは、穏やかな印象の松尾さんの表情が、少し厳しくなったような気がしました。

「そんなことをしていたら、鍛造で時間、手間暇をかけた本物のハワイアンジュエリーの価値が間違って伝わっていってしまいます」

では、もし、ちゃんとしたハワイアンジュエリーを選びたければ、私たち素人はどうしたらいいのでしょう。ハワイアンジュエリーを選ぶ時のポイントを教えてもらいました。

「長く使っていきたいのであれば、鍛造で作られているのか、鋳造で作られているのかどうかを聞いてみてください。でも、販売員がそういった違いをわかってないお店もあります」

それで、販売員さんがしっかりしているかどうかも見抜けるわけですね。ごまかされないようにしたいです。

ジュエリースクール「ラヴァーグ」「ご自分で見分けるポイントとしては、まず、模様の密度を見ることです。指輪やネックレスに彫り込まれている模様の密度が詰まっているか、スカスカなものではないかどうか」「20年ほど前、ハワイアンジュエリーが大流行して、ハワイのお土産としてみんなが買ってきた時期がありました。そのころ、ハワイアンジュエリーを短時間で少しでも多く量産できるように、模様がシンプルになったんです。模様を簡単にすることで、ハワイアンジュエリーは早く作れるようになり、低価格になりました。だから、良し悪しを見るなら、模様の密度を見るのがいいんです」
「じつは、安く売られているハワイアンジュエリーの中には、『ホノルル直送』と書いてありながら、実際には中国で大量に作られているものがあります。中国で作ったものをハワイに持って行くと、ホノルルに買いつけに行った日本の雑貨屋さんなどが買って、日本でそれを売るわけです。ハワイで買ったものだから『ホノルル直送』であることはウソではないのですが」

なるほど。確かにウソではないですね。「Made in Italy」と書かれたトマトの缶詰の中身のほとんどが中国産だということに似ていますね。

「2つ目のポイントは、彫りの深さです。これも同じ理由で、浅く彫るほうが早く彫れます。サラッと彫っているのか、深く彫っているのかをチェックしてみてください」
「僕たち専門家は、彫刻刀で金属を彫った面積の一番奥を見ると、良し悪しを見分けられます。コピーしていない商品は、ちゃんと彫刻刀で彫っているので、彫った溝が光っています。でも、型を取ったものは、鋳造から上がってきた段階は表面がザラザラしています。それを磨いてきれいにするのですが、奥の方は磨けないため、光っていないのです。だから、一番深いところを見ると、コピー商品かどうかがわかります。このことを知っていれば、一般の方でも見分けられます」

そうなんですね!奥の光が鈍いかどうか、つまり、スパッとなっていて、ピカッとなっているか、今後は注意して見てみたいと思います。

ハワイアンジュエリーの修理事情

ところで、プアアリさんは、工房も併設されています。だから修理のニーズにもすぐに対応できるそう。

ジュエリースクール「ラヴァーグ」「お客様からの問い合わせでとても多いのは、修理したい、というものです。たとえばハワイに行って、ノリや勢いでジュエリーを買って、それが壊れてしまったというような場合ですね。アクセサリー程度なら、新しいものを買えばいいかもしれませんが、高価なジュエリーをハワイで買って、帰国してから普段の生活の中で使っていこうとすると、サイズを直すなどのメンテナンスが必要になってきますよね。そこで修正してくれる店を探してみて、どの店でも修理できないと言われた、という問い合わせが全国からあるんです」

友人にも、ハワイアンジュエリーのお店に相談したら「ハワイアンジュエリーの修理はできないんですよ」と断られたという人がいます。

「普通のジュエリーの修理は、切って金属の溶接をしますが、ハワイアンジュエリーは、修理をするにも、彫刻を入れていかなければなりません。修理できるお店がないのは、その技術をもっている工房がないからなんです。プアアリでは、職人が常駐している工房を併設していますから、修理の依頼にも対応できます」

たしかに、表面がツルッとした普通のジュエリーなら切ってからサイズを合わせて溶接して磨けばキレイになりますが、ハワイアンジュエリーは全面に模様があるので、そんなに簡単ではないのですね。

「修理と言っても、一から模様を彫り込むような技術が必要になります」
「せっかくのジュエリーを買うなら、本来、ちゃんとメンテナンスもできるお店で買うべきです。プアアリでは、ずっと使えるものを提供することで、ハワイアンジュエリーを買うお客様に貢献できていると思います。どんなに忙しくても彫りをシンプルにしたり、浅くしたりせず、きちんと手間をかけたものを作っています」

ハワイアンジュエリーには、大手メーカーが参入しづらいと聞きました。

「1個1個手彫りをしていくのはたいへんな技術力と手間がかかるため、大きいメーカーは、ハワイアンジュエリーにあまり参入してきません。コピーのような質の低いものはトップブランドは作りたがらないのです。プアアリがなぜハワイアンジュエリーを提供できているのかというと、職人を育てるジュエリースクール「ラヴァーグ」を併設しており、教育システムがしっかり揃っているからです」

何人くらいの職人さんがハワイアンジュエリーの技術を学んでいるのですか。

「ラヴァーグの生徒数は、今、430名ほどです。今のところ、ハワイアンジュエリーをきっちり教えることができる、これだけの規模の学校は当校だけです。学校があり、職人を育成するスキームが整ってるため、業績も上がってきています。ちなみに僕自身も現役で彫っています」
「自分でブランドを立ち上げたい人、ハワイアンジュエリーを自分で作れるようになりたい人が、年間でだいたい40〜50人くらい、ラヴァーグに入ってきます。ラヴァーグで学んだスキルによってお店を出した生徒さんもいます。手先の器用さも必要ですが、やはり大事なのは継続して学んでいくことです。スポーツと一緒で、トッププレーヤーと呼ばれる人は常に他人よりも練習しています」

そうやって、多くの人々が、日々、とことん技術力を磨いているんですね。ハワイアンジュエリーの業界は、しっかりとした技術を持つ職人さんが育っているようです。

「プアアリがこだわっていることは、ハワイアンジュエリーとはそもそも何なのか、ということです。業界全体で、ハワイアンジュエリーの真実の歴史や自然の大切さを一般に浸透させていきたいと思っています」

ハワイアンジュエリーはだれが作っているのか

ここでふと、ちょっと意地悪な疑問が湧いてきました。ハワイアンジュエリーなのに、日本人が作っていることについてはどう考えていますか。

「一般に、ハワイアンジュエリーは、ハワイでハワイの人が作ったものと思われています。ですが、生粋のポリネシア系であるハワイの人が作っているものはほとんどありません」

えっ、そうだったんですか。

「ハワイのある工房では、日本の異なるブランドにそれぞれジュエリーを卸しています。『ハワイに自社工房がある』とWebサイトには表記されているのに、工房の住所が正確に書かれていないようなハワイアンジュエリーブランドは、大体そういうところが作っています。じつは、ハワイにある工房でハワイアンジュエリーを作っているのは、何もハワイ生粋のポリネシア系の人であるとはかぎりません。フィリピン人やベトナム人、韓国人もいれば、日本人も働いています。お土産品屋さんの中には、ハワイに来て3日目ぐらいの人に売り物を彫らせているようなところもあるほどです」
「ハワイで売られている、そういったハワイアンジュエリーの多くは、高価であるにもかかわらず、結局、先ほども言ったように、どこにメンテナンスや修理を出したらいいかわからないわけです。ジュエリーというものは何十年も付き合っていくものですから、ちゃんとメンテナンスができるものを買うべきではないでしょうか」
「ハワイアンジュエリーの定義は、その模様や形、自然のモチーフにこそあると思います。ですから、それらのクオリティが重要になるのです。クオリティに徹底的にこだわり、高くしていくことは、日本人の得意とすることでもあります」

ハワイアンジュエリー業界の課題とは

ハワイアンジュエリー業界としての課題はたくさんありそうですね。

プアアリを運営する株式会社ジェイボックスの代表、松尾琢磨さん「ハワイアンジュエリーは模様や形、自然のモチーフが大切だということを、もっとお客様に伝えていかなければならないと思います。夏だけでなく、季節を問わず、ハワイアンジュエリーを身に着けることにどんな意味があるか、ということを、業界としてしっかり伝えていくことが課題です。そのようなスタンスでハワイアンジュエリーを広めていくなら、他のハワイアンジュエリーブランドともぜひ協力していきたいです」「ハワイアンジュエリーという商品は、普通のジュエリーに比べて売りやすいという特長があります。それは、語るべき意味、ストーリーがちゃんとあるということです」

ストーリーですか。具体的には?

「2030年には、世界の人口が今から15億人も増えると言われています。世界にもうひとつ中国ができるほどの規模の人口増加で、食糧危機なども起こるかもしれません。それを考えれば、乱獲なども戒め、世界がひとつになって海や自然を守り、地球の生産効率を上げていかなければならないでしょう」

壮大ですね。でも、現実に人類が直面することですからね。

「ハワイアンジュエリーには、自然を大切にする、そんな気持ちがこめられています。そういった思いをいつも持っているために、一人でも多くの方にハワイアンジュエリーを着けてほしいと思っています。そうすることで、お互いがお互いを思いやって、自然の中で豊かに、みんなが幸せに共存していけると考えています」

ハワイアンジュエリー業界にも、収益性などのビジネスメリットを優先的に考えているブランドも多く、それによって、本物のハワイアンジュエリーの魅力が過小評価されている可能性がありそうです。プアアリさんには、他ブランドさんからも修理の依頼や製造の相談が多く寄せられているとのこと。松尾さんは、そういう競合他社をも受け入れるスタンスで、業界全体のことを考えていました。

おばあちゃんからもらったハワイアンジュエリーがいつの日か、娘から孫に譲られていき、模様の意味や、そこに込められた思いが伝わっていく。

そんな宝物をプアアリで探してみてはいかがでしょう。

2017年5月25日 プアアリ恵比寿本店にて
取材/榎並千陽、構成/松阪美歩

インタビュアー/榎並千陽

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